「週刊文春」編集部 2024/01/12
事故で大破した車を「手直しして出荷するわ」“認証不正”ダイハツ《工場のリアルな実態》怪我を隠蔽、内部告発者は飛ばされて……
《深層レポート》ダイハツ「不正30年」の病根(びょうこん) #3
「臭いモノにはフタをする。ダイハツの企業体質を一言でいえば、そういうことになります」「週刊文春」の取材にこう語るのは、ダイハツの現役社員だ。
昨年12月に発覚した日本を代表する自動車メーカー「ダイハツ工業」で30年以上にわたって行われていた組織的(そしきてき)不正。「週刊文春電子版」は「《深層レポート》ダイハツ『不正30年』の病根」と題し、これまで2回にわたり、現役社員や元従業員の証言をもとに、同社で永らく(ながらく)不正が行われてきた組織的背景や、現場の実態を報じてきた。
ダイハツの企業文化を象徴するものの1つが、#1で報じた“恐怖のなぜなぜ分析”だ。ミスをした社員は部下の前だろうと社内会議で「なぜ」という問いかけを繰り返され、人格的・精神的に追い詰められ、ひたすらつるし上げられる——。
つるしあげ 0【吊るし上げ】ひとりの人を大勢で責めなじること。「―を食う」
こうした慣習のもとで培われて(つちかわれて)いったのは、「失敗を表に出したがらない」という多くの社員心理だった。
“なぜなぜ分析”という悪しき文化
前出の現役社員が語る。
「例えばリコールがあった際には、ダイハツでは上層部や親会社のトヨタにコトの顛末を報告する資料のなかに『●●が判断した』というように社員の個人名が無断で記載されていることがある。なぜ問題が起きたか仕組みを分析するのは理解できますが、責任の所在を一社員という個人に帰属させることに意味があるのでしょうか」
前述した“なぜなぜ分析”も、本来は失敗の本質を見極めるための手法だが、ダイハツでは、いつしか“つるし上げ”のツールのようになり、「やる意味」に疑問符がついているという。
「業務上の失敗を次に起こさないようにするために“なぜなぜ分析”をやるならばいい。しかし、ダイハツでは交通のもらい事故や駐車場内の自損事故まで、“マイナスな出来事”ならば、何でも“なぜなぜ”の対象となる。しかも、やること自体が目的化してしまっているため、問題の本質を考えるためにやっているというよりは、『こういう書き方で報告すれば上も大丈夫だろう』と上層部を納得させることばかり考えているから、意味がないんです。
“なぜなぜ分析”はもともとトヨタで始まったものですが、ダイハツに輸入され、もう何十年もこうした形で運用されてきた。ダイハツの悪しき文化の1つと言ってよく、誰かしら毎日やっていますよ。『何やってんの?』と聞くと、『“なぜなぜ”や』って。上が納得しなければ『なぜなぜ』をやり直さなければならず、面倒なので、そもそもミス自体を隠すことも多いのです」(同前)